全員悪人

 私事ですが、86歳になる母親はグループホームに今年からはいっています。4年前に父親が亡くなりました。父親は小さな脳梗塞がたびたびおきたようで、だんだん弱っていきました。父親が弱り始めて、母親とごちゃごちゃするようになり、地域包括支援センター、ケアマネージャー、ヘルパーさんや訪問看護、デイサービスや配食サービス。昨日までできていたことができなくなることの、高齢者問題に当事者として(対応のメインは近くに住んでいる弟ですが)対応することになりました。

 すでにいろいろなところで取り上げられていますが、CCCメディアハウスから出版された、村井理子著「全員悪人」を読み、とても身につまされました。認知症の高齢女性の一人称語りの物語です。自信をもって生きてきただろう女性が認知症の発症と共にいろいろと混乱していき、出来ていたことができなくなり、それどころかいろいろとやらかしてしまいます。それによって家族が混乱し、その女性は憤りを持ちながら、あふれた自信から底知れない不安へ進んでいきます。ただ、この物語には力強い、悲観的でないお嫁さんがコーディネーター的に存在し、その言動に救われます。

 私事に戻ります。自分が親元から独立し子育てが終わり、次は親の老後対応で、その次は自分の老後です。父親が亡くなる数年前より、いろいろと心の拠り所になっていた親が頼りないというより、拠り所でなくなってきたことに気付いて、少し寂しくなりました。今は娘のよりどころ(?)と思いますが、今に自分も親のように弱っていくのだろうと想像しています。「全員悪人」を、ほんとうに自分事として読みました。

 犯罪の問題にかかわる仕事をしていますと、ご相談の方とご家族の人生にかかわることになります。高齢の万引きの方のご家族のご相談では、徘徊先で事件を起こされ、今後についての話で「24時間私が看ます」という奥さんがおられました。迫ってないけど迫られた感があったのでしょう。それは無理なので、皆で対応を考えました。情報提供と踏ん切りをつけるための背中押しを誰かがしなくてはならないです(踏み出すのはご自身ですが)。ご家族は混乱と憤りと不安でいっぱいでしょうが、ご相談の当事者さんも同じ状態です。支援者としてのかかわり方を確認する1冊でした。(小林)