知的障害のあるひとの犯罪におもう

 先日、軽度といっても中度に近い知的障害のかたの判決がありました。その人は少し大きな傷害事件を起こしました。以前も傷害事件で実刑になっていましたので、今回は少々長い実刑が言い渡されました。裁判中、障害であることで支援を受けることは拒否をされていました。本人の供述が変わり、事件直後に自分からやったと言ったにもかかわらず、やらなかったとかえてしまい、弁護士は大変苦慮されたようです。

 この方は前刑の時にご家族からご相談を受けていました。熱心なご家族で、障害基礎年金のことや、出所する際に特別調整を希望すると地域定着支援センターにつながることができるなどの情報提供をしました。その時の事件は家族に対する傷害でしたので、ご家族は恐れて身元引受はできず、施設で懲罰があったのか、満期出所でした。それでも、年金はある程度たまっていましたし、ご家族が借りたアパートに入るということで、こちらへの相談はなくなりました。障害の程度は、支援なく一人で社会で生きるには重いのですが、本人も家族も障害を受け入れることは難しかったようです。粋がって職を探すのですが、うまくいかず、一人ぼっちの生活の中で他者と諍いが起きるようになり、今回の事件となったようです。

 社会福祉士を長くやっていると、何度も何度もお会いする方、ご家族がいます。ある人は小学校で出会い、中学校の時に調整をいろいろと行いました。その後、保護観察所で再会し、成年になって大人の事件でまたまた再会ました。この間、10年弱。彼が調整されて関係した専門機関は10くらいありますが、行った先で問題が起きると自宅に戻ります。「問題が起こりました」か「出所します」か、なにかそこにいることができなくなって、「迎えに来てください」となります。家族は受け入れ続けます。

 単なる無能なコーディネーターの愚痴なのですが、あの時、どうしたらよかったのだろうと考えてしまいます。

 Sさんは中度の知的障害の方で、数十年ホームレスをしていました。前科はないのですが、前歴がたくさんありました。たびたび、社会につなぐ支援をしました。いくつかの法人のサポートをうけ、最後、郊外の救護施設に行くことができました。救護施設の新しい生活は放浪することはありませんでしたが、ちょっと盗っちゃうことがありましたが大したことにならず、法人がフォローしてくださいました。そのたびに法人から連絡が入り、お団子やケーキを持って訪ねていき、もめごとにはふれず最近の調子をきいて帰ってきました。その法人は「こんなことがありました」というだけです。当初は昔の知り合いの名前が出ていましたが、それもなくなっていき、もう2年ほど施設から連絡が来ません。すっかり定着してくださったようです。時にはこのようなケースもあり、「Sさん、ありがとう」と思ってしまいます。(小林)