引致ーいんち

 刑事司法ソーシャルワーカーの活動で、実刑後に仮釈放になり福祉的支援をしていたり、保釈中に支援をしているときに対象者が「引致」され、どこに行ったか連絡がつかなくことがあります。「引致」とは何でしょう。

 「引致」とは、逮捕状・勾引状などにより被告人・被疑者・証人などを強制的に官公署その他の場所に連行することです。(刑事訴訟法73・202・215)

 ですので、「警察官に逮捕され警察署に引致され、取調室でとりしらべが行われ、その後「48時間以内」に検察官に送致するかどうか検討される。」となります。なお、検討の結果、検察官に送致されず、釈放となることもあります。

 保護観察所でも「引致」が時々あります。例えば仮釈放中の保護観察対象者が、遵守事項を遵守できていないと疑われるに足る十分な理由がある場合等に、仮釈放の取り消し申し出等を前提に、必要な調査をするため引致することがあります。つまり、保護観察対象者(仮釈放者、保護観察付執行猶予者)に遵守事項違反又は再犯等があった場合に不良措置として、仮釈放者に対する仮釈放の取消し及び保護観察付執行猶予者に対する刑の執行猶予の言渡しの取消しがありますが、まず、事情を聴取するために保護観察所等へ引致して取り調べるということです。

 保護観察対象者に遵守事項違反等の疑いがあるときは,保護観察所の長は,保護観察対象者からの事情聴取を含む調査を行いますが、保護観察対象者が出頭の命令にも応じない場合等には,保護観察所の長は、裁判官が発する引致状により引致することができるとあります。さらに、保護観察所の長又は地方更生保護委員会は、不良措置の審理を開始するときは、一定の期間、引致された者を留置することもできます。

 また、所在不明になった仮釈放者については保護観察を停止することができますが、18年5月から、所在不明となった仮釈放者及び保護観察付執行猶予者の所在を迅速に発見するために、保護観察所の長は、警察からその所在に関する情報の提供を受けています。仮釈放中の対象者が再犯をして逮捕され、保護観察所に引致され、拘置所に行くということもあるようです。

 「引致」という言葉だけでは必ずしも再犯とは限らないかもしれませんが、引致状によって引致され、取り調べを受ける状態になったということではあります。

参考:犯罪白書令和2年版、社会福祉法人南高愛隣会「こんなときどうする?福祉的支援を要する人が被疑者・被告人になったら」

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