逮捕から判決までー結審と判決

刑事事件の事件発生から、判決までの言葉を紹介します。特に、結審と判決が間違えやすいのでご注意です。

事件発生後、警察が事件を認知しますと、捜査がはじまります。その場合、逃亡の恐れがなく、証拠を隠滅するおそれがない場合は、勾留されずに在宅事件として捜査が行われます。一方、逃亡のおそれがあり、証拠を隠滅する恐れがある場合は逮捕・勾留されます。逮捕されてから72時間以内に書類が検察に送られると(釈放されないと)、10日間の勾留が行われます。この10日間で捜査が尽きないと、さらに10日間の勾留延長があります。逮捕され3日、書類が送られて最長20日間の勾留で裁判に行く(つまり起訴される)ことになります。

逃亡の恐れがなく、証拠を隠滅するおそれがない場合の在宅事件でも、当然、起訴はあります。保釈も逃亡の恐れがなく、証拠を隠滅するおそれがない場合ですが、身元引受人が必要です。在宅事件は23日間の縛りがないため、勾留された場合よりゆっくり流れます。

裁判=公判になると、第1回公判、第2回公判と進んでいきます。だいたい、冒頭手続き、証拠調べ手続き、弁論手続きとなり、証人尋問などが間に入り、結審となります。結審の次が判決です。だいたい数回にわたっておこなわれますが、事件によっては第1回公判で結審まで行き、第2回公判で判決という場合もあります。

審理の最終が結審です。判決は結審の数日後になります。結審までを確認して、裁判官が判決を決め、判決の日に判決内容と理由を伝えることになります。

「判決」という言葉が、言い渡しをする日(判決日)のことと、判決内容(懲役〇年、執行猶予〇年とか)と同じ言葉になりますのでご注意です。結審があって次に判決です。(ただ、即日判決というのもあります。即決裁判・即決判決とは、争いのない簡易・明白な事件について、簡易かつ迅速に裁判を行う手続きです。)

警察署や拘置所での面会

 刑事司法ソーシャルワーカーの活動の第1歩は、被疑者・被告人となった方との面会です。(第1番は弁護士との顔合わせですが) 留置されている警察署や拘置所に行って面会をするのですが、初めは弁護士と同行する場合が多いです。弁護士と一緒であっても一般面会になります。なお、弁護士面会は、一般面会とは異なり、平日でなくても会えたり、時間制限がありません。社会福祉士面会は弁護士から警察や拘置所に時間延長の連絡をしてもらいます。通称:特別面会で決まりはないですが、少し延長してもらえます。

 すでに弁護士から、社会福祉士さんの支援について対象の方にお話しいただいているのですが、それでも初めましてなので、お互い緊張します。しかし、たびたびは面会をすることはできません(ワーカーの時間の都合)ので、ご本人の傾向を素早くつかむ必要があります。また、時間に限りがあるので、自己紹介から始まりますが、聞かなくてはいけないことや書いてもらうもの(個人情報使用・収集の同意書)の説明などで、時間があっという間に過ぎてしまいます。書いてもらうものは差し入れとなります。書き終わる(例えば署名)と受け取らなくてはならないです。受け取りは宅下げとなります。「差し入れ」て「宅下げ」をするのです。

 一般面会は、一日一組です。(一人ではありません。1回は3人までが可能です。)また、被疑者段階は検事の調べで検察庁に行っていて不在なことがあります。弁護士の面会には警察官や刑務官の立会いがいませんが、社会福祉士等の一般面会には立会いがいます。

自立準備ホーム

 自立準備ホームは更生保護の関連施設で、仮釈放や更生緊急保護の対象者を受け入れる民間施設です。保護観察所に登録されたNPO法人や社会福祉法人等が、保護観察所の依頼を受けて生活場所等を提供します。更生保護施設は公表されていますが、自立準備ホームは公表されていません。登録形式ですので、結構たくさんありますし、ダルクやマックのような依存症関連の団体も登録しています。

  平成23年度から開始された「緊急的住居確保・自立支援対策」に基づいた施設で、NPO法人等が管理する施設の空きベッド等を活用するものです。あらかじめ保護観察所に登録しておき、保護が必要なケースについて、保護観察所から事業者に対して宿泊場所、食事の提供と共に、毎日の生活指導等を委託するものです。

 基本的には、施設や団体ごとに生活を送るうえでのルールが決められているところは更生保護施設とは変わらないと保護局のパンフレットにありますが、アパート形式が多く、更生保護施設と異なり夜間の管理などがないところが多いようです。といっても、申請は保護観察所に行います。保護観察所が支援を申し出た人の様子と施設の状況を判断して決めます。あの施設がいいとか、この施設は嫌だとか、希望を出せるものではありません。また、込み具合やその他の状況で入所できないこともあるようです。

 更生緊急保護の場合は、不起訴や執行猶予での申し込みも多くなります。いずれも、検察官から保護カードを発行してもらい保護観察所に申請します。支援者は利用したい人の状況(生活支援のこととか)を、保護観察所にしっかり伝えるといいとおもいます。

微罪処分

 成人の刑事事件のうち、犯情の特に軽微な窃盗・詐欺・横領、盗品等に関する事件、賭博事件等で、検事正があらかじめ送致の手続きを取ることをようせず、毎月一括して検察官に報告すれば足りるとして指定した事件について、司法警察員が検察官への事件送致をしないことーつまり、軽微と考えられる事件は、送検しないで、警察段階で刑事手続きを終了させることです。(刑事訴訟法246ただし書) 

PだのKだの、いろいろな呼び名・通称

 福祉の仕事をしていると、いろいろな呼び方が・通称があります。一般的なのが「ワーカー」です。精神保健福祉士はPSW(Psychiatric Social Worker)なので「Pさん」。医療ソーシャルワーカーはMSW(medical social worker)で「Mさん」とはあまりいわないですが、精神科以外の医療機関で働くソーシャルワーカーで社会福祉士資格の人が多いです。社会福祉士は「Sさん」とはいわず、なぜかPSWだけ「Pさん」です。社会福祉士と精神保健福祉士の両方の資格を持つ人もおおいですし、「Pさん」も精神科の病院でだけ働いているわけではありません。ちなみにケアマネージャーは「ケアマネ」さんですね。

 司法福祉の仕事をするようになり楽しく感じたのは、刑事司法に関係する関係者の呼び方(書き方)です。ピーからケーに連絡してとか、ビーに依頼とか、エーの調書とかです。ピー(P)は検察官(Prosecutorの頭文字)、ケー(K)は警察(Keisatsu)、ビー(B)は弁護士(Bengoshi)、エー(A)は被疑者・被告人(Accused)だそうです。裁判官はJ(Judge)ですが、事務官もJになるだろうと思ったらGでした。副検事はエスピー(SP:Sub-Prosecutor-和製英語)です。被害者はブイ(V)(Victim)ブイ支援と言ったりします。他にも、このような略はあります。SKSというのが精神鑑定嘱託支援班(Seisin Kantei Shien)です。これらの呼び方はよく飛び交います。日本語、英語ごちゃまぜです。ちなみに弁護士会に障害について研修を受けた弁護人名簿がありSH名簿といいます。Sは障害者のようですがHがわかりません。何回か聞いているのですが、記憶できないです。

 このように元の言葉が長いからか、早く話すためにかは不明ですが略されることが多く、慣れないとうろうろしてしまいます。日本語ですが、「ろくろく」は「録・録」で取り調べの録音・録画で、「ろくしゅ」は「録取」で被疑者・参考人などの供述を供述調書などに書き取ることだそうです。「逆送」は家庭裁判所から、調査の結果刑事処分相当と認め、決定したら検察庁検察官に送致することだそうです。

 刑事司法ソーシャルワーカーの皆さんは、これらの言葉が飛び交いうろうろすることもあるかもしれませんが、慣れでしょうか、慣れですね。(小林) 

 

国選弁護人と私選弁護人

 刑事事件には、被疑者・被告人の弁護活動を行う弁護人(弁護士)がいます。弁護人には「当番弁護人」と「国選弁護人」、「私選弁護人」がいます。

 まず、「当番弁護人」がいます。当番弁護人は、逮捕後72時間以内に1回だけ被疑者が今後の対応などについて相談できる弁護士です。逮捕されたときに警察から弁護士を頼む権利があると言われます。当番弁護士の制度自体は1度の接見のみですが、当番弁護士として派遣された弁護士に、その後も継続して弁護活動をしてもらいたい場合は、その当番弁護士の方を私選弁護人として選任することができますし、そのまま国選弁護人になってもらえることもあります。

 国選弁護人は、国(裁判所)が選任した弁護士です。72時間の逮捕機関が終わり、勾留されるとついてくれるのが国選弁護人です。資材が無ければ国選の弁護人をたのめると言われ、お願いしますと答えると、あらかじめ名簿に登録された弁護士の中から選ばれるもので、選ばれた後に変更はできません。なんらかの障害が認められる時は、法テラスにあるSH名簿という研修を受けた弁護士に依頼がいきます。在宅事件にはつきません。

 国選弁護人は法テラスの制度です。国選弁護人がつく条件は資力が50万円以下、法定刑が死刑・無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件となっています。また、被告人となったときに私選弁護人を選任していない場合も、公判前整理手続・期日前整理手続・即決裁判手続による事件(例えば在宅事件で起訴される)については国選弁護人が選任されます。

 私選弁護人は、被疑者・被告人本人やその家族等が契約をして、弁護士費用を支払って弁護活動を依頼します。当然ながら弁護費用はまちまちで、契約によります。私選弁護人は費用負担はしなくてはならないですが、依頼者の目的に合わせた弁護活動が期待できるようです。

 なお、国選弁護人が付けられない事件でも、日本弁護士会に、「刑事被疑者弁護援助」があります。身体を拘束された刑事被疑者のために、接見とアドバイス、警察官・検察官との折衝、被害者との示談交渉、その他被疑者段階の刑事弁護活動一般を行う弁護士に、依頼者に代わって弁護士費用を支払う制度です。資材が無いのに私選弁護人だと思ったら、この制度で弁護士がついているということもあります。もちろん、依頼者が被疑者国選弁護を受けられるときには利用できません。

 

保釈

 拘留されている刑事被告人に対して、公判期日への出頭を確保するため一定の保証金額を定め、納めさせて釈放する制度(刑事訴訟法)

 刑事裁判で有罪判決を受けない限りは犯罪者としては取り扱われない「推定無罪の原則」にもとづいています。保釈されれば仕事もつづけることができますし、学校に行くこともできるということで被告人の利益を守る目的だそうです。 

 保釈を請求できるのは、①被告人本人、②選任を受けた弁護士、➂被告人の父母・配偶者・兄弟姉妹・被告人の保佐人です。(まだ選任されていない弁護士、内妻・恋人・友人等はできません)

 退所後(保釈中)の身元引受人、住居の制限等の条件がつきます。家族・親族が身元引受で住所地になることがおおいのですが、東京地裁の事件でも、例えば、遠い北海道にいることもあります。必ず裁判所の出頭命令には応じなければなりませんし、当然公判には出なくてはならないです。

 保釈には保釈金があります。保釈金は一様ではありません。摂食障害などでの万引き事件は、数百万とそこそこお高いようです。保釈金は金融機関の融資は利用できず、自力で用立てられない場合は日本保釈支援協会のサポートを受けることもできるようです。保釈金は被告人が逃亡しないための担保で、被告人の財力によって変動することもあるようです。保釈の条件に違反した場合は保釈が取り消され、保釈金は国に没収されます。違反しなければ返還されます。

 保釈は先にも書きました被告人の利益を守る保釈が行われるのですが、重罪事件でない、過去に重大な有罪判決を受けていない、常習でない、証拠隠滅の恐れが無い、被害者・証人に対して危害を加える恐れがない、氏名・住所が明らかであることが、大前提です。

 

法務少年支援センター(少年鑑別所)

 少年鑑別所法が変わり、全国の少年鑑別所には「地域とつながり 地域につなげる」というキャッチ―で「法務少年支援センター」が地域に向けた事業をおこなっています。

 「子供が学校で友達とトラブルを起こしてしまい、困っている。」「家庭内でのしつけについて悩んでいる。」このような悩みを、心理学等の専門知識を有する職員が丁寧にお聞きし、例えば保護者の方に対して、今後のお子さんとの接し方を助言したり、お子さん御本人に継続的にカウンセリングを行ったりするなどの援助を行っています。(法務省ホームページより)

 東京には「東京法務少年支援センター ねりま青少年心理相談室」が練馬の東京少年鑑別所に、「東京西法務少年支援センター もくせいの杜心理相談室」が昭島の東日本成人矯正医療センター等がある国際法務総合センターの一角にあります。

 子どもから高齢者まで相談をうけてくださいますし、知能検査からアンガーマネージメントまで、いろいろと相談できます。学校での研修講師、法務教育授業等々多岐にわたって、地域の非行・犯罪の防止、青少年の健全育成のための活動を行っています。

 全国共通の相談ダイヤルは0570-085-085です。

更生緊急保護

 社会福祉士が弁護士と協働して被疑者・被告人の支援を行う「刑事司法ソーシャルワーク」(東京社会福祉士会での名称で、協働する社会福祉士を刑事司法ソーシャルワーカーといいます)活動で、裁判で執行猶予になった場合の住まいとして、更生緊急保護制度を使うことがあります。

 更生緊急保護制度は、満期釈放で出所したが何ら頼るところが無い場合に利用できる制度として、矯正施設で「保護カード」の交付を受け、保護観察所に支援の申請ができるというものです。内容は食事・医療・宿泊・旅費等です。宿泊は更生保護施設や自立準備ホームです。

 刑事上の手続き又は処分による拘束が解かれた後6か月を超えない範囲で行われます。特別措置もあります。必ず、何らかの処分が必要で、同じ勾留されていても嫌疑不十分では利用することはできないです。

 「保護カード」は矯正施設の長、検察官からだされます。起訴猶予の場合は検察で検事から、裁判で執行猶予になる場合も裁判所で検事から交付されます。

 更生保護施設等は仮釈放者が優先となり、施設に空きがない場合もあります。更生保護施設同様、こちらから施設の指定はできません。

 

更生保護施設

 犯罪を犯した人や少年で頼ることができる人がいなかったり、生活する環境が利用できる法務省関連の施設です。矯正施設対処者や保護観察者、更生緊急保護者等が一定の期間、宿泊・食事の提供をうけます。期間はその人の状況で異なります。就労指導や社会適応のための指導等があり、円滑な社会復帰を支援する施設です。

主な支援は以下の通りです。(法務省ホームページより)

○生活基盤の提供
 宿泊場所や食事の提供など,入所者が自立の準備に専念できる生活基盤を提供します。

○円滑な社会復帰のための指導や援助
 日常の生活指導など,入所者が地域社会の一員として円滑に社会復帰するための指導を行います。

○自立に向けた指導や援助
 就労支援や金銭管理の指導など,入所者ができるだけ早く一人立ちを果たし,退所した後も自立した生活を維持していけるように必要な指導や援助を行います。

○入所者の特性に応じた専門的な処遇
 更生保護施設に入所する人の中には,飲酒や薬物へ依存の問題を抱えていたり,対人関係をうまく築くことができなかったりするなど,社会生活上の問題を抱えている人が少なくありません。
 更生保護施設では,入所者がこうした問題を解決して,社会生活に適応するための専門的な処遇を行っています。

□酒害・薬害教育
 アルコールや薬物の害を学習し,これらに依存しない生活を維持していくことを目的として,医療機関や福祉機関とも協力して実施されます。

□SST(Social Skills Training)
 心理学の認知行動療法に基づいて対人関係場面での振る舞い方を体験的に学ぶものであり,円滑な社会復帰のために効果があると認められています。

□コラージュ療法
 芸術療法の一つであり,雑誌などから好きな写真やイラストを切り抜いて台紙に貼り付けるものです。言葉にできない感情を表現し,心理的な開放感や思考の深まりを促し,情緒の安定を図ります。

 この他にも,パソコン教室,ワークキャンプ,料理教室など,入所する人の問題に応じたきめ細かい処遇が実施されています。

 更生保護施設は全国で104施設。東京都内には約20の施設(現在工事中の施設もあるため)があります。法務省関連の施設であるため、原則就労自立ですが、利用者の中には障害や高齢のために就労自立が難しい人もいます。その場合、生活保護などの福祉制度へのつながりには、地域行政との間でスムーズにいかないこともあるようです。

 また、保護観察所には更生保護施設とは別に「自立準備ホーム」が登録されており、更生保護施設のように出所者や更生緊急保護等で利用希望の方を受け入れています。

更生保護施設も自立準備ホームも、本人の利用希望を保護観察所に申し出てきまります。矯正施設入所者が仮釈放で利用希望の場合は、帰住希望地の更生保護施設の職員が事前に面接を行います。更生緊急保護の場合は、申し出た保護観察所の保護観察官が面談をおこないます。いずれの施設も相部屋(昨今は個室もあります)で禁酒です。面接ではこれを護れるかを問われるようです。

 なお、紛らわしい言葉に「更生施設」があります。これは生活保護法による保護施設で、福祉事務所に申請をします。こちらも禁酒です。